short novel

リラ





 僕が声のした方を向くと、そこにはまぎれもないリラがいた。



「……何でいるの?」

「いちゃ悪い?」


 リラは珍しく怒っているようだった。


「そっちのドアは鍵の魔法がたくさんかかってたから入れなかったけれど、そこの窓には何もかかってなかったよ」



 後ろにあるたった1つのこの部屋の窓は、まだ開いていた。そこから朝日とさらっとした朝の風が入ってくる。


 ……完敗だ。僕は出会った時からリラには勝てないらしい。




「分かってるよ」

「えっ?」


 僕が何を言おうか下を向いて迷っていると、リラは笑っていた。


「私の力をよくないことに使おうって考えている人がいるのもちゃんと分かってる。私は人の感情だって分かるんだから」


 得意そうにそう言うリラはいつものリラで、僕は安心した。



「私が行くのは、ドラゴンが傷つけられるのは嫌だからよ」



 安心した僕だったけれど、リラらしいはっきりした言葉にまた不安になって吉良。


「でも隣の国と戦争をしようとしてる人だっているかもしれないんだよ」

「その人のことは、ドラゴンと話してから決める。どっちも戦争になんて使われたくないはずだからケンカになんてならないでしょ」



 リラはそう言っている間も、少しも明るい穏やかな感じを崩さなかった。朝日を受けて、リラは輝いて見えた。





「ありがとう」


 そんなリラに見とれていると、リラが言った。


「ずっと心配してくれてありがとう」



 そう言ってリラは僕の頬にキスした。


「えっ、えっ、えっ?」

「大丈夫。絶対無事に帰ってくるから」



 天使はそう言って僕に何も言わせず窓から飛び立った。




リラ
まぶしくてまっすぐな天使の名前




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