short novel

リラ





「リラちゃんが家に来てくれたわよ」


 母さんの声がすぐドアの外側から聞こえて、僕はさらに鍵の魔法をかけた。


「帰らせて!」


 僕はリラに会いたくてしかたがなかったけれど、会うわけにはいかなかった。



 リラは僕のこんな様子を不思議に思うだろう。昨日も怒鳴って別れちゃったし。



「リラちゃん帰ちゃったわよ」



 しばらくして、母さんの声が聞こえた。これでいいんだと自分に言い聞かせる。




 そこでふと、リラがドラゴンに襲われたらどうしようという不安がまた僕を襲った。



「リラ!」


 今度は『リラなら大丈夫』では僕を止められなかった。



 鍵の魔法を解こうとしたけれど、何重のもかけてあるからなかなか解けなかった。



「呼んだ?」


 それでもドアから出ようとしていると、後ろから今まさに聞きたかった声がした。





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