short novel

リラ




 リラはどんなものとも心を通わすことができる能力を持っていた。


 確かに、何度もリラの周りに動物が集まったり、リラが笑うと鳥が本当に歌ってるように鳴いたりするのを何度も見たことがあった。



 その力はどんな猛獣にも使えると思った大人がいたらしい。


 リラは今日、森の奥に住むドラゴンにその大人の言うことを聞かせるために森へ旅立つ。


 その大人が何を考えているかは分からないけれど、リラの力を利用しようとしているのも、良い目的で使わないことは子供の僕にも分かる。


 隣の国とあまりうまくいっていないみたいだから、その国と戦争をするのかもしれない。



 リラは何も知らされていない。ドラゴンと話をするのに邪魔だから話すのは禁じられた。だからリラは今も何も知らずに、この国の人のために役に立てると喜んでいる。



 そんなリラの気持ちを踏みにじるのは許せなかった。だけれど、リラにこのことを教えたらどうなるかなんて想像するだけで怖い。



 リラを危険にしないためにはどうすればいいのか、僕にはまだ見つけられなかった。





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