short novel

秘密越しの結末




「私が……あなたの好きな人と仲がいいから?」


 尾ひれはついているのかもしれないけれど人から聞いてだいたいのことを知っている私にとっては、ずいぶん遠回しな言い方に聞こえた。


 遠慮しているつもりなのかもしれないけれど、私には自分が悪く思われないようにという彼女の常套手段にしか聞こえなかった。



 彼女が何をしたいのかは、やっぱり分からなかった。


 彼女が計算なのか、それとも無意識なのか何なのかはどうでもいい。もうここまでで良かった。次の段階にすすまなくては。



「まぁ、仮に私に好きな人がいて、その人とあなたが仲がいいとしよう。それだけで私が怒るとでも? 私のこと何だと思ってるの? どれだけ自分がやったことを美化すれば気が済むの?」


 少し言い過ぎたと思ったけれど、後悔はしなかった。何度脚本を書き直したって、私の台本にも彼女の台本にも私が感情を抑えられないことは入っただろうから。



 私は彼女が私の予想通りのセリフを言わないことを確かめたかった。



 リスクしかない彼女との話し合いを了承したのは、それだけが理由だった。



「……ごめん」



 泣き出さなかったから私はまだ感情を抑えられたが、彼女は私の予想と全く違わないセリフを口にした。



 ここでもまだ逃げられるのか。やっぱり私たちはここまでだった。


 何でこの人は私にこういう風にしか接してくれないのだろう。私の性格なんてもう1年以上になるのだから、隠し事もはっきりしないのも嫌いなのも分かっているはずなのに。そもそも友達のはずの人が怒っているのに、何でこんなことしか言ってくれないんだろう。


 私たちはなぜ、ここまですれ違うのだろう。私たちは友達だったはずじゃなかったのか。


 それとも、この人の友達なんてその程度なんだろうか? こんな人と私たちは友達になろうと今まで無理をしてきたのだろうか。



 そしてなぜ、あの人はまだこんな人を好きなのだろう。



 コップの水を半分ほど飲む時間を使って、彼女の回答を念のため待ってみた。



 もうとっくに、手遅れなのかもしれない。


 本当はここで彼女に攻撃をしたかったけれど、私は秘密の移り香に酔ったふりをするしかない。





 私があの人を傷つけることなんて、できるわけがないのだから。





 一番気にくわないのは、彼女がこのことを計算でやっているということだった。少なくとも無意識で、こんな状態の私さえも自分のためだけに利用しようとする。



「ごめんね」


 彼女はもう一度言った。


 そんな言葉で私が救われるとでも思っているわけじゃないだろう。ただ単に、自分が救われた気になりたいだけだろう。



 私はそれ以上彼女の言葉を聞きたくなくて、口を開いた。





3/5

prev/next



- ナノ -