short novel

秘密越しの結末





 セルフサービスの水を持ってきてくれた彼女の姿は、ガラス越しに映って反対に見えた。


「話って何?」


 その世界に親近感を持ちながら、彼女が私の前にコップを置いてくれるのを待ってから聞いた。


「最近、私のこと避けてない?」


 うつむいてまるで自分が被害者であるかのように平然とふるまう彼女に呆れたが、話す前から険悪にしてもしかたがないのでなるべく余計なことを言わないで返した。


「避けてるのはそっちでしょ」


 彼女が持ってきてくれた水を一口含むと秘密の味がしたので、それ以上飲むのは止めた。


「違うよ。そんなつもりじゃないの。ただ……」


 それに近いことをやっているということは自覚はあるようだ。それとも下手に出ているだけなのか。



 最初から彼女を疑いにかかっている自分に疲れながら、つくづく人間関係、特に友情には信頼が大切だと思った。




 彼女の言い分を聞いていて思ったのは、『またはじまった』という感じだけだった。


 いつも通り私の意見なんて聞かないで話し続ける彼女が話し終わるのを、聞き流しながら待っていた。


 いつまで続けるつもりなんだろう、この演技。私はもうやめたいんだけれど。





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