short novel

幸せなら戦おう




「でさ、あたしがさ……」


 毎週木曜日の授業の空き時間に、カフェで悩みを聞いてもらうのが私の最近の日課。


 カフェの安心する雰囲気もあって本当は毎回悩み相談なんてしたくないんだけれど、つい話してしまう。



「まだそんなこと気にしてるの?」


 向かい側に座っているのは、いつものお相手の友達。凛々しい顔つきで切れ長の目の奥に隠れたかわいさがあるから、とっても魅力的。


 もちろん魅力的なのは外見だけじゃなくて、何でも的確に言葉にして言ってくれるかっこよくて素敵すぎる性格の持ち主でもある。


 少し毒舌なところもあるけれど、はっきり言ってくれるその友達が大好きで、話してるととってもすっきりする。




「やっぱりあきらめられないからさ、ダメなんだよね」


 苦笑して言うあたしのセリフもおきまりのもので、友達をまた何か言いたそうにうつむかせてしまった。



 分かってる。このままじゃうまくいかないのも、このままじゃダメなのも分かってる。



 だけれど、目の前はまだ真っ白で、どこに向かえばいいのかなんて分からない。


 それが執着とか依存という形なのか、それとも本当に自分の意志なのかまだあたしには見えなかった。





「もう分かってるはずでしょ?」


 いつの間にか飲み終わった紅茶のカップを見ていたみたいでそこから顔をあげると、あたしをまっすぐ見つめている友達の目があった。


 友達はそれしか言わなかったけれど、その透き通った目の中にその先の言葉が見えた。



 分かってる。本当は見ないふりをしているだけってことも。怖がってっても、何もしなければだけじゃ何も変わらないってとっくに気づいてる。


 でも、この先がどうなるのか不安でしかたがないのも、本当はそんな決断したくないのも何も変わらない。



 だけれど、あたしはこの友達とのこの時間をムダにしたくなんてなかった。



 あたしが顔をあげると、何も言わないまま私を心配そうに見てくれている友達が映った。あたしのことを待ってくれている友達に、笑顔に見えるように笑って言った。





「大丈夫だよ」



 その言葉を使って、私はまだ先の見えない未来に道を描いた。



幸せなら戦おう
また来週もこんな時間を過ごしたいから





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