short novel

現実という名の宇宙で




side 3



「昨日話を聞いたんだけれど、また元気なさそうだったんだ」


 最近彼女のことの情報交換が会話の中でずいぶん多くなってきている。


 彼女はずいぶん前から悩んでいるようだった。それは私ももちろん、周りの人もみんな気づいている。


 だけれど彼女は本当に優しい人で、辛いときも何も話してくれない。同じ「友達」という関係である私にも他の人にも聞き出すことはできなかった。


 そんな彼女から話を聞き出すのは、この人にしかできないことだった。


 じゃあ、私は何なんだろう。何にだったらなれるんだろう。



「何にだってなれるよ。器用じゃん」


 いつの間にか口に出ていたようで、友達のそんな声が聞こえた。


 何にだってなれるのは、きっと何にもなりきれないから。そんなことを言いそうで、今度は寸前で口を塞いだ。



「今だって私の話を聞いてアドバイスしてくれるじゃん。私にできなかったことをしてくれるじゃん。そんなすごい人を他には私は知らないよ」


 その言葉を聞いて、私は友達の方を向いたまま、固まってしまった。こんなことを言ってくれるなんてさすがこの人だとは思ったのもあるけれど、あることに気づいたから。


 私たちはその時になってみないと分からない何かでつながっているのかもしれない。



 まるで人が星座をつくるように。



あなたは星の数もいない
そう信じて「その時」とのたった一度の出会いを待っている




3/5

prev/next



- ナノ -