short novel

現実という名の宇宙で



side 1



「私にできることなんて何もないけれど」


 前から友達であったはずなのに、彼女は私といると最近とっても楽しそうによく笑うようになった。



 それなのに同じくらいこんな言葉を言うようになった。



 彼女がよく笑うようになった理由を、彼女は『私との関係が深くなったから』と言ってくれる。


 それが本当に彼女が笑うようになった理由かは知らないけれど、最近私がずっと悩んでいたことを話してから彼女との関係が変わったのは確かだ。


 もとはといえばかけがえのない友達である彼女のためだったから彼女が笑うようになってくれたのは嬉しいけれど、その言葉を聞くたびに私は私たちの関係を変えてよかったのかと疑問に思ってしまう。



「そんなことないよ」



 泣きたい気持ちに追いつかれないように、必死に言葉をつなげた。


 こんなまるで自分は何でもないような言い方をされたら、私はどうしたらいいんだろう。


 いつもみたいに悲しくて何も言えなくなる前に、言葉が言葉にならないままあふれる前に、私は一言だけ言った。





「……いないよ」

「えっ……?」



 この荒んだ世界で、あなたみたいな人はそうはいない。心の中で続きを叫ぶ。



 私にとってはあなただけ。あなただけでいい。



あなたは星の数もいない
誰もあなたの「かわり」にはならない




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