short novel

悪魔とおかしな回想




Scene 10


「何を思い出してたんだ?」


 これまでのことを思い出して幸せにひたっていたけれど、隣に座っているヴァルの声で現在に戻ってきた。


「これまでのことを思い出してたら、おかしくなってきちゃって」


 笑いをこらえきれなくなって私が笑いながら答えると、ヴァルも微笑んで言った。


「えっ、何?それはリゼが俺のこと好きすぎておかしいってこと?」

「なっ!……まぁ、それもあるけれど……」


 自分から言ってきたくせに私が肯定するとは思ってなかったみたいで、ヴァルは驚いたような顔をしてからやわらかく微笑んで私に顔を近づけてくる。


「ついてるって」


 今にもキスしてきそうなヴァルの口元を指でぬぐったら、その指をヴァルに捕まえられてなめられた。


 私の顔が熱くなってるのを見て、ヴァルはさらにやわらかく微笑んだ。


「アップルパイも、あと白いクリームのたくさんついた……何だっけ?」

「ショートケーキ」

「そう、それ。それも甘くて好きだけれど、やっぱり一番甘くておいしいのはリゼだよな」



 そんなこと言うヴァルだってお菓子以上に甘いのを私は知っている。



 私がこんなことを思っている間に、このおかしな悪魔はそっと私にキスした。





 今日も私たちはこうやって、私たちの運命をつくっている。





悪魔とおかしな回想
私たちの運命のつくり方


fin.

13/14

prev/next



- ナノ -