short novel

悪魔とおかしな回想




「……俺、お前に謝らなくちゃいけないよな。お前の屋敷を燃やしたり、お前の……」

「もういいわ」


 俺が初めて謝っているというのに、相手は俺の言葉を遮った。これは謝っても許さないから、謝っても仕方ないという意味なのだろうか?



「それ以上に、ヴァルに幸せにしてもらえたから」



 しかし彼女が言ったのは、俺の予想を裏切るいかにも彼女らしいことだった。



「ずっと不安にさせてごめんね」


 リゼは予想外のことを言われて何も考えられない俺の頬をなでながら言った。



「私も謝らなくちゃいけないことがあるの」


 また不安になって、頬のリゼの手から逃れよたくなった。だけれど彼女は俺の目をまっすぐみてくるので、金縛りにあったみたいに動けなくなった。





「私には、あなたにあげられる運命なんてなかったのよ」



「……えっ?」



「運命は誰かにあげるとかそういうものじゃなくて、自分でつくるものなのよ。だから最初から、私にはあなたにあげられる運命なんてなかったの」



 あぁ、そういうことか。俺はふいに笑いがこみあげてきた。


 なぜ彼女が他の代償たちのようにならなかったのか、やっと分かった。それと同時に胸が熱くなる。



「……ヴァル?」


 リゼが心配そうに俺を見ている。俺が言いたかったことは、俺が言おうとする前に俺が言おうとしていた以上に形になって出ていた。




「俺の運命をつくってくれてありがとう」



 俺が頭をなでると、リゼは幸せが形になって広がりそうなくらい幸せそうに笑った。


「違うよ。ヴァルが一緒につくってくれたんだよ。ヴァルが私に優しくしてくれるから、私も頑張れたんだ……」



 リゼの言葉を聞き終える前にがまんできなくなって、甘そうなピンク色のリゼの唇に唇を合わせた。リゼがつくってくれるオカシよりもずっと甘かった。





「……違うよ。リゼがあきらめなかったkらだよ」


 恥ずかしそうに口をかくしているリゼは本当にかわいくて、キスが1回で終わらなかったのは言うまでもないことで……。



 あと1回、いやあと3回キスしたら『これからも一緒に運命をつくろうな』って伝えよう。





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