short novel

悪魔とおかしな回想





「最初は憎んでたね」


 予想はしていたとはいえ、やっぱり実際聞いてみるとショックだった。それでも、『最初』というところに望みをかける。


「ヴァルがちゃんと聞いてくれたからちゃんと答えるけれど……ずっと、怖かった」


 体中の血液が上手くまわらなくなってきたみたいで、頭痛までしてきた。これまで人々の絶望というのを糧にしていたが、自分が絶望するのはこんな感じなんだろうか。



「でもね」


 薄れていく意識の中で、リゼの声が遠くから聞こえた。


「それ以上に愛してるから、平気だよ」

「……えっ!?」


 今度は止まろうとしていた血液が一気に高速でまわりはじめたみたいで、頭が混乱する。


「今、何て……」

「何で2回も言わせるのよ!3回目は言わないからね」


 顔を真っ赤のくせに、それでも俺の目を真っ直ぐ見て彼女は言った。



「愛してるわ、ヴァル」



 すぐ俺の腕の中に小さく縮こまるように俺にくっついてしまった。



「……ヴァル?」


 そんなリゼを引き離して、俺は言葉を探す。



 目当ての言葉が見つかる前に、かつて俺が代償にもらったニンゲンに、『お前は愛なんて分かるはずがない』と言われたことを思い出した。



 あわてて頭からその記憶をふりはらう。もう今の俺は、以前の俺とは違うのだ。



 リゼが変えてくれたのだから、逃げてはいけない。





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