short novel

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「よくも次から次へと、口説き文句みたいな単語が出てくるわね」

「当たり前じゃん。口説いてるんだから」


 そう言って健斗は健斗のくせに、大人の顔で私に顔を近づける。何だか急に恥ずかしくなって、あたしは健斗から目をそらした。


「ちょっと、何して……」

「気づかなかったの?」


 いつの間にか健斗は、あたしのほほに手をあてていた。その手でそっと私の顔を自分の顔の方に向かせると、優しい声でささやく。


「次、『F』だよ」

「いや、……そんなに近かったら何も言えないから」


 あたしは吐息がかかりそうなほど近くにいる健斗の目から、目をそらせないまま言った。


「少しはドキドキしてくれてるんだ」


 一方の健斗はといえば、余裕たっぷりで……。


「『K』までいったらキスしてもいい?」





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