short novel

Favorite




「B、B……。『But』」

「なんで『But』?」


 健斗は私が時間をかけて考えた単語に、光の速さで文句を言ってくる。


「よく『でも』って言うでしょ?」

「でもさ……」

「ほら、また言った!」


 私が健斗の言葉を待たずに言うと、健斗はさらに不満そうに言った。


「『Brilliant』とか言えないの?」

「『Brilliant』!? 輝かしいとかそういう意味なのに、何で健斗なんかに……」


 何だか健斗が、らしくもなく寂しそうな顔をするので、私は何も言えなくなってしまった。


「じゃあ『Cute』」

「えっ!?」


 私がびっくりして健斗を見つめていると、健斗は不思議そうな顔をした。


「別に変じゃないだろ?お前可愛いし」

「なっ……。ほら、次あたし!」


 今日の健斗は、変だ。いや、変なのはいつもなんだけれど、今日はいつもとは比べ物にならないくらい変!


 とりあえず慌てて話をそらしたものの、『D』ではじまる言葉が思いつかない。


「D、D……」

「あるじゃん!俺がいつも美由に使う言葉!アルファベット4文字の!」


 健斗は目をキラキラさせて言うので、あたしは慌てて目をそらした。





2/6

prev/next



- ナノ -