short novel

誓いは空に願いは地に




「なぁ、お前が俺様を呼び出してまで叶えたかった願いって何なんだ?」

「……秘密」


 言えるわけがない。言ったら、あなたは私の目の前から消えてしまうでしょ?



 私はこう答えるとき、とっても悲しそうな顔をするらしくて、オーサはいつもとは比べられないくらいさらに優しくなる。今だって頭をなでるだけじゃなくて、ぎゅっと抱きしめてくれた。


 私は、嬉しすぎて歓声を上げてしまいそうになるのを抑えるのが精いっぱいで、何も言えなくなる。



「……またそれかよ」


 オーサは呆れているというより、悲しんでいるという感じで言った。



 もしかしたら、上位魔族のプライドを傷つけてしまったのかもしれない。



「私はもう眠るから、見張りをして」


 そんなオーサを気遣うというより、私は眠気に負けて言った。


 まだ魔法の修行中だった私の魔力は、オーサに比べれば本当にほんのわずか。消耗もとても激しい。



「お前が眠っている間に襲われても起こさねぇーからな」

「……ダメ、起こして」

「そんなこと言ったって、お前ほとんど魔力残ってないじゃねぇか。今だって寝ないように目を開けてるのがやっとだろ?」


 『早く休め』とでも言うかのように、オーサが頭をなでる。するとさらに眠気が襲ってきて、目を閉じる。


「……だって、強くなりたいんだもの」



 『あなたに認めてもらえるくらい』



 その言葉が最後まで聞こえたかのか、『無理するなよ』というオーサの声が聞こえた。





 かつて私が地に埋めた願いは、『私の生きている意味が見つかりますように』。


 その願いを叶えるために現れた魔族は、とても私の願いを叶えてくれるようには見えなかった。


 それもそうだろう。その願いは、私が叶えるために自分で努力しなくてはいけないものでもあったのだから。





 目を閉じる前に最後に見えた空に、その先の未来まで届くように私は誓った。



『愛する人と一緒にいられるように頑張ります』





誓いは空に願いは地に
安全な場所に戻れたら、『愛する人といつまでも一緒にいさせてください』という願いを埋めに行こう



fin.

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