short novel

誓いは空に願いは地に




「だいたい、お前は俺様のご主人様なんだから俺様を守ることなんて気にしてるんじゃねぇよ」


 オーサのぬくもりで頭がぼーっとしている私を心配してか、オーサが私の顔をうかがいながら言った。


「オーサこそ私の下僕なんだから、私のやることに口出ししないで」

「なっ……。げ、げぼ、下僕!?!?お前な……」


 私は自分の気持ちをごまかすために、心にもないことを言った。



 オーサは最初は怒ってどこかへいってしまったりしたけれど、最近では何かに気づいたらしく、頭をなでられたり余計優しくされる。


 ……私の気持ちなんて、知らないままでいてくれないと困るのに。



「それがお前の命令か?」


 そして私に優しくしながら、必ずこう言う。


「そう」


 見なくても分かる。オーサは複雑そうな顔をして私を見ているだろう。だから、私は何も気づいていないふりをした。





 本当は数ヶ月前のあの日、私は魔族を呼び出す気なんてなかった。オーサを召喚してしまったのは、ただ、言い伝えにすがった結果だった。



 その言い伝えとは、自分の願いを書いた紙を地に埋めることによって、その願いが叶うという、何とも胡散臭いいい加減すぎるものだった。



 ……だけれど、それにすがるしか私は救われなかったのだ。



 もちろんただ紙を地面に埋めればいいというものではない。


 私はその足りない何かを探すために、魔道士の先生に弟子入りして魔法を勉強し始めた。そしてその何かを見つける度に、片っ端から試していた。



 その結果、今私はオーサの腕の中にいる。



 最初は自分の願いとは違うと思ったけれど、そんなわけでは決してなかった。





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