short novel

L is L





 夜の暗闇をぼんやりとした灯が照らしている。


 それはとても夜の暗闇とは戦えそうにないすぐにでも消えそうな光だけれど、それでも私たちが隠れている場所を照らすには十分でそこに存在しているだけでよかった。



「何食べたい、フィオ?」


 危険な昼を越えて夜を迎えたからだろう。ルーサは少し眠そうな目で笑って言った。きっと私を安心させるために無理して笑っているからだろう。その笑顔は少し痛々しかった。





 どこの国だかも知らないけれど、数日前私たちの土地が欲しいからという理由だけで、優れた文明の力を使ってわざわざ私たちの住む王国までやって来た。


 もちろん、そんな人々に神から与えられたこの土地を渡すわけにはいかず、断ったらその日から戦争がはじまった。


 戦争といっても私たちは自然で生きる最低限の力だけしか持っていなかったから、相手にならなかった。


 昼間は私たちの耳を壊すことが本当の目的であるかのように大きな爆音が後をたたない。



 ここに逃げのびてから外に出ていないから分からないが、私たちの故郷はすでに焼野原になってしまっただろう。


 夜は攻撃される心配はないものの、昼間のショックが大きいのだろう。ルーサがずっと眠れないでいることを私は知っていた。


 それでも彼が私にそのことを表面にあまり出さないのは、ルーサらしい。ここまで追い込まれれば気が狂うか、そうでなければ我を忘れてしまうだろう。


 私が今もまだ自分を保っていられるのは、ルーサのそんな姿があるからだった。





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