short novel

sunset





 ある夏休み前の、最後の登校日のことだった。


 1日だって会えないのは辛いのに、1カ月以上も会えないことは考えられなくて、勢いで4月からずっと好きだった人に思いを伝えてしまった。





 それから何時間経ったのか、いつの間にか太陽は空をオレンジ色に染めていた。



 そう、太陽のような人だった。明るくて優しくて、いつもその人の周りには笑顔があふれていた。


 私には眩しすぎて声なんてかけられなかったけれど、目が離せなかった。ねぇ、こんなに好きなのに……。




「何で?……ねぇ、何でなの?」



 その声は、日陰を通って静かに過去に吸い込まれていった。もう学校には誰もいないのに、私はまだ悲しみが止まらなくて、倉庫の間の日陰に埋もれている。



 そこは私のお気に入りの場所だった。日陰なのになぜか向日葵が1輪、日陰でも壁のすきまから必死に太陽を見ようと茎を天に伸ばしている。


 その向日葵は何だか自分に似ているような気がして、毎日放課後にこの場所に来るようになった。


 花は話しかけるとよく育つって聞いたような気がしたから、その向日葵には私の恋の話もよく聞いてもらっていた。



 だけれどやっぱり、日陰だからなかなか陽の光が当たらないのか、周りの向日葵とは遅れてその向日葵はまだつぼみのままだった。


 それでも日に日に少しずつゆっくり花を開かせて、今日は真ん中の茶色のところがもう少しで見えそう。


 このままいけば、もう少しで花を咲かせるだろう。その日を見逃さないために、夏休み中も毎日通おう。



 そんなことを決めてその向日葵を見ていたら、とっても悲しくなってきてもうとっくに枯れたと思った涙がまた出てきた。


「……ごめんね。応援してくれたのに振られちゃったんだ」






 私がそのまま顔を膝にうずめて動けずにいると、頭の上に何かが優しくのった。





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