short novel

再会は無記録




 僕が女性の悲鳴の方へ走っていくと、倒れている女性ともう1つの黒い人影をぼんやりと街灯が映していた。真っ黒なのでよく分からないが、背格好からして男性のようだった。


「その人から離れろ!!」


 状況がよく分からないが、影がかがんで女性に手を伸ばそうとしているのを見て、僕は叫んだ。


 影は僕がそう叫んでからやっと僕がいることに気がついたようで、僕をゆっくり見上げて言った。



「……やっと会えた」


 僕は何度思い返しても、その声に聞き覚えはなかった。その声はすぐに風に乗って消えてしまいそうなくせに、忘れられないくらい透き通っていた。


「おまえは誰だ!」


 警戒心を全く解かない僕に、影は首をひねる。それは僕がなぜ警戒しているのか分からないという感じではなかったようで、影はこう言った。





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