short novel

うさぎシンドローム








 私が舞の誕生日近くになると、舞へうさぎのぬいぐるみをプレゼントするようになったのは小学生の頃。ちょうど私がうさぎにかまれて時からだった。



 舞は私がうさぎにかまれて悲しんでいるのをとっても心配してくれて、それから彼女は私の前ではうさぎのぬいぐるみを買わなくなった。



 だけれど、私は知っていた。


 舞は気づいていないんだろうけれど、いつも私の前でもとってもうさぎのぬいぐるみを欲しそうにしている。



 もう何年も経ってるから言ってもいいんだけれど……。



 舞は自分からはもちろん、近くでうさぎの話が出そうになると、私に気を使ってうさぎの話が聞こえないところまで連れ出してくれる。




 そんな彼女の優しさを大切にしたくて、今日も私は何も言えない。





「今年はね、ピンク色なんだけれど、目が大きくてすっごいかわいいの!!!」



 舞は気に入ってくれたようで良かった。舞のお母さんは、今年も舞に何も言わずに渡してくれたみたい。



「でも、何で私が欲しいものを毎年分かるんだろう……」




 不思議そうに、でも嬉しそうな舞を来年も見たいから、私はこんな言葉で飾った。




「きっと、舞を大切に思ってくれてる人がいるんだよ」




 ……真相を私が明かすのは、まだ先の話。



fin.

6/8

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