short novel

カレハ




 だから、だから会いたくないと言ったのに……。



 予想を裏切られたことが悲しすぎて、もう私の目からは涙すら出てこなかった。


 目の前の愛する人は、もう人ではなくなっていた。見る者全てを石に変えてしまうこの目からは、涙を流すことすら許されないのかもしれない。



 それなのに、愛しているのならば、愛してくれる人ならば、この呪われた運命から解放されて幸せになれる……なんておとぎ話を信じていたのだ。



 現実はどうだろう。



 見よ、固まっても色濃く残る彼のこの驚愕の表情を。あんなに手紙では愛を伝えてくれたのに、今までこの目の犠牲になった人と何も変わらないではないか。



 膝をついて、その手にそっと触れてみる。たった一度も触れることすら叶わなかったぬくもりが残っていた。それは私の心をまるで氷のようにしていくのに、私はなぜかその手を放したくなかった。


 もう片方の手を、そっと彼の手にのばす。握ることはできないが、せめて包みたかった。戻ってこなくても、せめて繋ぎ止めたかった。



 どうして私の体は、人を冷たくすることしかできないのに、こんなにもあたたかなのだろう。





 その答えを告げるかのように、枯葉が一枚私の膝に落ちた。




カレハ
悲しみという形で永遠に私の中で生き続ける

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