short novel

旧校舎とあの子




「だから、何かを傷つけて罪を作ってしまう前に、早く解放してあげよう。それで、新し校舎を同じくらい大切に想ってあげよう」


 彼女にちゃんと私の言葉は届いたみたいで、うなずくとゆっくり立ち上がった。


「それ、ちゃんとシャープペンじゃなくてボールペンで書かないとダメだから」


 私は委員長だからなんていう理由だけで、ここにいる自分が恥ずかしくなった。ボールペンを彼女に渡したこの手は、ちゃんと震えを隠せていただろうか?



 彼女が旧校舎を出て去っていく姿を、私はいつまでも見送っていた。



 ……何だか、急にとても目薬をさしたい気分になった。




旧校舎とあの子
それはひとつの優しさだったのだろう



fin.

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