short novel

旧校舎とあの子





 もしかしたら、私は相手のことを見た目や言動だけで悪く考えすぎていたのかもしれない。


 彼女が言う自由とは、たとえわがままと紙一重だったとしても、彼女が大切にしていることには何も変わりはない。


「でも、いつまでも残しておいたら危険でしょ?」

「そんなの人の言い分だろ」


 とりあえずいらだちをしまって行ってみたけれど、相手は納得してくれなかった。


「……人だけじゃないでしょ?崩れる時に近くに動物がいるかもしれないし」

「入ってこないようにすればいいだろ」

「間違って入ってくる可能性だってあるでしょ?」


 ふと相手が黙ってうつむいた。その顔があまりにもかなしそうなので、私は言いすぎてしまったと後悔した。



 本当は、彼女もすべて分かっているのかもしれない。



「……きっと、そこまで想ってもらえたなら、幸せだったよ」



 私がそう言うと、相手がゆっくりと顔を上げた。





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