short novel

旧校舎とあの子




「あなたがちゃんと新しいクラスに来てくれれば、ちゃんと朝に言えるんだけれどね」


 私が笑顔を崩さないままそういうと、舌打ちが返ってきた。



 悪いところは素直に認めてくれるから、この人物をそんなに嫌いになれない。


 ――たとえ見た目が、茶髪、ロングスカートはもちろん、全身校則違反な格好だったとしても。


「で?今日も持ってきたの?」


 相手はこの期間で、私に言い返しても何にもならないということを学んだらしい。すぐに話を変えた。さっさと終わらせたいのかもしれない。この定番になってしまった出来事を。


「はい。今日の分と……」


 私は何にも気にしていないようなふりをして、今日の授業のノートの紙の束とカバンから一枚の紙を出した。


「これ」



 それが何の紙なのか、私は自分の口からは言いたくなかった。……またいろいろ言われるのを分かっていたからもあるけれど。





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