short novel

旧校舎とあの子




 また私か。



 もう沈もうとしている夕日の中、私はその日も一人で歩いていた。


 手にはカバンと、今ではおなじみになったルーズリーフやらプリントの紙の束。最初はファイルに入れてあげていたけれど、毎日毎日繰り返されるからやめてしまった。


 そしていつも通り、今ではもう誰も通わなうなった旧校舎へと向かう。


 気は進まないのだが、足は進めなければならない。それは私がクラス委員長だからであって、それ以上でもそれ以下でもない。



「またあんたか」


 相手もそれを分かっているみたいで、私お顔を見るなり不機嫌そうな声を出した。


「おはよう」


 私はそれを無視して、笑顔と明るい声を作って言った。


「もう夕方だし」


 相手は私の努力をすべて無視して床にあぐらをかいた。


 床につきそうなほど長いスカートだからめくれるかはそんなに気にすることはないのかもしれないけれど、もうそうじしなうなってからずいぶん経つ床が汚いことに変わりはない。


 ……今となっては、そんなことさえ私も気にならなくなてしまっていた。





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