short novel

僕と魔王と新学期




「えっ?」


 いきなり投げられたので危うく落としそうになったが、なんとか受け止めて投げられたものをよく見てみる。



 僕はあんまり外で遊ぶことはないから、ちゃんと見たことがないんだけれど……。確か、グローブって呼ばれていたものだった気がする。



「江本! 早くしろよ! 『高速の魔王』と呼ばれた俺の球を受けてみろ!」


 ……魔王の由来って、そこだったのか。

 そういえば、大橋君は始業式の自己紹介の時に小さいころから野球をやっていて、今は野球部に入っていてピッチャーだったと聞いたような気がする。


 僕は何とかグローブに手を入れてみて、ボールを待っていた。



「江本、行くぞ!」



 その声と一緒に、僕の横をそよ風とは言えないけれど、爽やかな風が通り抜けた。

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