僕と魔王と新学期 ふとあることを思い出して、急に僕は足を止めた。 魔王って、結局誰なんだ? 僕が最初手紙を見つけた時そばにいたしからずっと大橋君だと思っていたけれど、よく考えてみたら、対決しようとしている人のそばにいるなんておかしいんじゃないかな。 それとも、魔王は僕を憎んでいるわけではないからおかしくないのかな。 でも、大橋君が魔王だったとして一番おかしいと思うのは、何で彼が魔王に呼び出されたかだ。もし大橋君が魔王なら、わざわざ自分のことを自分で呼び出すはずがない。 ……それに、僕が教室を出た後も大橋君は教室にいたんだ。それなのに僕に追いつくはずがない。 大橋君が魔王ではないという結論にたどり着いて安心した反面、何だか今更になって魔王が恐ろしく思えてきた。 そんな考えを振り払って、屋上に繋がるドアに手をかけた。いつもは閉まっているはずのそのドアは、びっくりして転びそうになるくらい簡単に開いた。 この学校にいて2年間、初めて僕はその場所にたどり着いた。屋上だからか、風は強くて、目も開けていられないほどだった。いや、屋上だからじゃない。今日は風が強いって昨日の夜の天気予報で言っていたような気がする。 あれ? じゃあ、何で、大橋君は体育館裏に置いてあったという魔王の手紙を見つけることができたのだろうか。 「遅かったね」 僕がその答えにたどり着く前に、『答え』の声が聞こえた。 声のした方を見てみれば、見たことのある人が僕の方を見ていた。逆光だからどんな顔をしているのか分からないけれど、昨日と今日で僕はそれでも誰だか当てることができた。 でも僕は、もうその人の事を怖くはなかった。 prev/next |