僕と魔王と新学期 ――ガラガラ! 今度は思いっきり教室のドアを開けた。それでも、誰も僕に気づいた人はいないようだった。何かクラスに変なところがないか辺りを見回してみる。 「宿題は終わったのか?」 「うわ!!」 僕がクラスに何か異変がないか必死になっているのに、のんきに朝聞いた声が後ろからした。 起きた時とは違って、今度はこの声の人物が誰だか分かった。僕はきっと、この声の主をもう当分忘れないだろう。 「それより、何かクラスで変なことなかった?」 僕のせっぱつまっている様子を見て、大橋君は少しも動揺することなく、何か心配してくれるわけでもなく、ゆっくりと首をかしげた。 「何かあったのか?」 そのいらだちを通り越してあきれるほどのんびりとした反応に僕は何か言いたくなったけれど、魔王からまた手紙が来たことも言いたくなくて、クラスの様子を観察していた。 「魔王から手紙が来たのか!」 僕がクラスを心配そうにして見ていると、急に大橋君が大声を上げた。それと同時に右手がわずかな風と同時に涼しくなる。 あっ、そういえばまだ魔王から来た手紙を手に持ったままだった気がする。そんなことに気づいた時にはもう遅くて、大塚君の方を見れば、封筒を開けて手紙を読んでいるところだった。 「このクラスに魔法をかけるなんて、さすがは魔王だな」 慌てて僕が大塚君の手から手紙を取ろうとしたら、大塚君は手紙の内容はもう全て読み終わった後だったみたいで、昨日と同じように軽く言った。 prev/next |