short novel

僕と魔王と新学期





「……大橋君?」


 怒る前にびっくりして、次言おうと思った言葉は全て頭の中でつまずいた。


「いつまで経っても起きてこないから、起こしに来たんだよ。お袋さんは朝ごはん作るのに忙しそうだったから、頼まれたんだ」


 お母さんに文句を考える前に、僕の体がふわっと浮いた。地震の次は……無重力状態!?


「ほら」


 僕がとまどっている間に、ハンガーから外された制服が投げられる。

 僕が危なっかしく受け止めたが、まだ大塚君がどうして僕の部屋にいるか理解できなくて、でもどう聞けばいいのか分からなくて、彼を見つめていた。


「何?いつまでも着がえないってことは、こう君は俺に着がえさせてほしいのかな?」

「違う!!」


 僕が自分でも驚くぐらい大きな声を出したら、昨日あんまり眠っていないのに目の前にライトを近づけられたかのようにはっきりした。


「早くしないと朝ごはん食べちゃうからな」


 大橋君はそんなことを言って、僕のカバンを持って部屋から出た。


 ドアをちゃんと閉めてくれるところから、そんなに悪い人じゃなさそうだ。



 ……そんなことを知っても、苦手なのは変わらないけれど。

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