short novel

僕と魔王と新学期





「孝太郎! お友達が来てるわよ!」


 僕が遅刻ギリギリまで寝て少しでも睡眠時間をのばそうとしていると、母さんの声がした。



 昨日はなぜだか帰ってもゲームをする気が起きなくて、奇跡と言っても過言ではないくらいすぐ寝ることを選択した。あれほど一日中魔王を倒して姫を救うことを考えていたのにおかしい。


 あんまり早い時間に寝ようとしたからかなかなか寝つけなくて、そのまま朝を迎えてしまったのだった。



 でも、友達……? 朝のこんな早い時間に、わざわざ僕の家まで迎えに来てくれる人なんていたかな?


 そんなことをなかなかはたらかない頭の中で考えていると、誰かが僕の部屋のドアを思いっきり開ける音が聞こえた。布団から顔を出してそれが誰だか確かめる前に、僕の体が揺れる。震度7とは人が怖いと感じるほどの揺れらしいから、まさにそれは震度7レベルだった。


「起きろよ! もう遅刻するぜ!」


 揺らされながらどこかで聞いたことある声が聞こえた。声からして男。しかも僕とはそんなに年が離れていない。父さんではなさそうだ。僕は一人っ子だから兄弟というわけでもない。誰だか思い出す前に、これ以上揺らされるのが嫌で僕はその手ごと布団をはねのけた。

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