short novel

僕と魔王と新学期




「あれ?」


 昇降口にいつも通りモンスターはもちろん制服を着た人にも会わずに着くと、そんな変わらない日常の中に異変を発見した。


 何かが、僕の下駄箱に入っている。それはそんなに大きくもなければ、厚いわけでもない。

 むしろ何が入っているのか分からないほど薄くて小さい。いや、何が書いているか分からないほど薄くて小さいと言った方が正しいかもしれない。


 それは、封筒だった。宛先もなければ、文字も書いていない。表も裏も真っ白の封筒。

 それが封筒だと分かるのは、折り目があって中に何か入れられそうな空間があるから。ただそれだけだった。

 封もされていなくて、誰でもすぐに簡単に開けられそうだ。下駄箱に扉がなければ、誰かが読んでいただろう。


 一番初めに思い浮かんだのは、ラブレターなんてバカみたいなこと。

 冷静になって考えれば、クラスで認知されているかも怪しい僕にそんなものをくれる人がいないなんてことが分かるはずだった。ついに僕は、気づかないうちに日常を空想世界にするようになってしまったようだ。


 でもその手紙は、ある意味ではそんなことに似ていた。


 その時はラブレターだと思い込んで早く見たかったからだったけれど、そこでその封筒を開けてしまったのも、大きな運命の分かれ道だったのかもしれない。

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