short novel

赤い糸




「……好きな人が他校にいるっていうのは?」

「嘘だよ」

「私に嘘ついってたってこと?」

「……だって、あの時渡辺に好きって言っても困ると思ったから」


 赤い糸は、誰かと付き合える時が近いことは教えてくれる。だけれど、誰と付き合えるかまでは教えてくれない。



「私、まだ……。瀬戸君のこと好きだよ」

「知ってる」



 だけれど、それでも、私の気持ちは変わらない。



「でも、渡辺のそういうところもけっこう好き」


 少しも動揺しないでそんなことを言ってのける相原君が何を考えているか分からなくて、怖いというよりどうしていいか分からなくて、私はさっと目をそらした。



 教室の窓から外を見れば、もう少しで咲きそうな桜の木が目に入った。




 それと同時に、『待っているから』と言った声が、横からはっきりと聞こえた。



赤い糸
恋の女神様はやっぱりイジワルらしい


fin.

9/10

prev/next



- ナノ -