short novel

赤い糸





「話って、何?」


 昨日呼び出した場所と全く同じ場所に、その人は立っていた。


「知ってたでしょ?」

「……何を?」


 その人は心当たりがあるみたいで、動揺したような顔をしてわざとらしく聞き返した。


「瀬戸君の好きな人が、私じゃないこと」

「……あぁ」


 嘘をついても仕方がないとおもったのか、その人は、相原君は悲しそうな顔で、あいまいにうなずいた。



 私のために心配してくれるのは嬉しかったけれど、それよりも、私の心の中は疑問でいっぱいだった。


「何で、言ってくれなかったの?私が悲しむと思ったから?」

「違う!」


 相原君は私がびっくりして何も考えられなくなるくらい、急に強く言った。


「渡辺は、そのくらいではあきらめないってこと分かってたから」

「えっ?」


 言いたいことが全部口のなかでつまづいて、私は何も言えなくなってしまった。



 だって、相原君の言うとおり、もしそんなことを聞いていたとしても、瀬戸君に告白してふられるという道を選んでいただろうから。



「……何で、そんなこと分かるのよ」


 私が悔しくなって何か言い返そうと考えたら、こんな言葉しか出てこなかった。


 それでもそんなことを言い返すと、相原君はいつかのように顔を赤くして答えた。



「ずっと前から好きだったから」





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