short novel

赤い糸







 次の日。


 そんなわけで私と相原君は一緒に少し離れた公園にいた。



 まだよく分からないけれど、私は瀬戸君を好きなのを隠すために、相原君は好きな人が他校にいるのを隠すために付き合っているふりをすることになった。


 相原君には好きな子が他にいるのに、そんなことしていいか何回も聞いたけれど、相原君は笑うだけだった。


 相原君もいいって言っているけれど、私は好きな人に嘘をつくなんてあんまり気が進まなかった。



 でも、瀬戸君を好きなのを隠すためには、親友の里香をはじめ友達と今まで通り仲良くするためには、これしかない。



 それに、この赤い糸の相手が誰だかも確かめなくてはいけない。


 今はその方法について話しているのだけれど……。



「だから、それは嫌だって!」

「俺はそれが一番無難だと思うんだけれどな……」

「相原君を信用してないわけじゃないけれど、瀬戸君は本当のこと言わないかもしれないでしょ?」


 今もめているのは、『相原君に瀬戸君に好きな人がいるか聞いてもらう』という方法なんだけれど、私はあんまりいい方法に思えない。


 瀬戸君は好きな人を言ったらその人がどういうことになるか知っているから、誰が好きとか言わないと思う。もし聞かれてすぐに教えてくれるのなら、今頃はとっくに学校中の人が知っているだろう。



 それに……。それであきらめたり告白したりするのって何だか違う気がする。


 他の人がどう考えているのかは知らないけれど、恋愛ってそんな単純なものじゃないと私は思う。



 もしこう言ったら相原君は納得してくれたかもしれないけれど、相原君にはそんなこと言えなくて、納得させることができないまま別れた。



 私の心がもう決まってるんだと思えただけで、十分だから。





6/10

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