short novel

Iris




 本当は私だって、あんなこと言うつもりじゃなかった。



「香織聞いた? 仲川さん、来週転校するんだって!」

「……えーっ!?!?」


 事件は放課後、梅雨が続くどんよりとした雲の下で起こった。


「やっぱり聞いてなかったんだ……。私も昨日聞いたんだけどね……。ってちょっと香織!!」


 ちょっと待って!! 何でいきなりそんなこと言われなくっちゃいけないの!? しかも本人からじゃなくて、友達の口から。そんなのありえなさすぎる!!


 本人の口から本当のことを聞きたくて、私はいつも彼女がいるあの場所へ走った。


 彼女が転校することは、私にとって突然のことすぎて、私の頭の中はちょうど今日みたいな天気みたいにぐちゃぐちゃに混乱していた。




1/9

prev/next



- ナノ -