背中合わせの願い 「はい、ですが今回はなんとか我々の力で姫様をお守りすることができましたが、彼らはどんどん力を増していきます。次からは我々の手に負えなくなるかもしれません」 碧弥は息を吸うことさえためらわれそうなそんなやりとりを、他人事のように聞いていた。 そして、世間知らずで愚かな人間を全て守ろうとしている優しすぎる姫様に、こんな丁寧に言い返す蒼斐を改めて尊敬してしまうのだった。 「それでも、彼らを傷つけてはなりません」 蒼斐が何を言っても、姫君の御心は変わらないようだった。 「彼らだって、ここに近づかなければ、傷つくことはありませんでした!」 蒼斐が謝罪の言葉を言おうとすると、碧弥が叫んだ。 「確かに、近づくことがなければ、傷つくことはなかったでしょう」 姫君がそう言うと、碧弥を止めようとした蒼斐は姫君が御考えを変えてくれたと安心した。 「しかし、そなたたちは誰も傷つけなくてすむほどの力を持っているはずです」 蒼斐が安心したのは束の間、やはり姫君は考えを変えていないようだった。 prev/next |