short novel

背中合わせの願い




 青年が叫ぶと、青年とよく似た青の衣服を着た『そうひ』と呼ばれた青年が城壁近くに姿を現した。


 手にはなにやら宙に浮く円盤のようなものを持っている。


「碧弥遅くなってごめん。もう少しだから」


 自分を呼んだ青年を見上げる形で青年の身を案じていることを抜いても、口調はとっても穏やか。黒い髪も長めで切れ長な目なのに、とても怖いとは感じない。


「俺は平気だけれど、量だけはいっぱいいるからな」


 『へきや』と呼ばれた青年は、矢を払いのけることを全く止めることなく、言った。


「間に合わなさそうだから、あれ使っていいよ」

「姫様から許可がでたのか!?」


 碧弥はとても驚いたようで、それは矢を払いのける手を止めるかと思われるほどだった。


 それは力を使いすぎる恐れがあるので蒼斐の身を心配していることもあるが、姫様が決して許さないのを知っているからだった。



「ううん」


 蒼斐も金色に光りだした円盤から手を離し、上で動かしていた手を止めて答える。


「……お前は大丈夫なのか?」

「……うん。だって僕のせいで姫様に危害が及んだら嫌だろ」


 碧弥は少し間をおいてから答えた。


「大丈夫、その前に俺がなんとかしてやるさ」





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