short novel

チャペルの見える窓





 ジェイソンが眠そうにしているのはサナが心配だからだと思っていたが、ただ単に朝早いからなのかもしれない。


 ジョウはこんな単純な事実に気づけずにいるあまり働きがよくない頭に叱咤した。



「朝早くからありがとうございました。それでは僕はこれで失礼します」



 ジェイソンが婚約者が誘拐されているのになぜ無関心でいられるのか知るために、ジョウは嘘偽りの笑みを顔にはりつけたままそう言って立ち去ろうとした。


 しかしそのまま立ち去ることはせず、隙のできたジェイソンに言った。



「サナさんは必ず助け出しますからご安心ください」

「えぇ!ぜひお願いいたします」


 ジョウが言うのを聞くな否や、心底嬉しそうにジェイソンは答えた。


 ジョウはあまりの態度の変わりように驚いて、それが演技ではないことを確認すると今度こそジェイソンの前を後にした。



 そしてそのすぐ後、外の窓から彼を観察する。彼はジョウが家を出ると、黒電話を取って電話をかけた。


 ジョウは電話の呼び鈴が鳴ると同時に、また玄関から中に入って、柱の陰から電話の内容に耳を傾けた。




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