short novel

チャペルの見える窓





 身代金の受け渡しの当日の早朝、一睡もしていないジョウは重いまぶたを上げながらある人物のもとを訪れていた。


 その人物はサナが誘拐されてからも、長年同棲していたサナの別宅にいた。



「ですから、何度も言っているじゃないですか。サナは落し物をしたと言ってどこかへ行ったきり戻ってこなかったと」


 高級そうな白いソファーに腰を下ろし、サナの話をしながらもジェイソンはしきりに眠そうな目をこすっていた。サナが心配で、彼も一睡もしていないのかもしれない。



 そんなことを考えながら、ジョウは目を無理に開けて考えていた。




 サナが誘拐される直前までサナのそばにいたジェイソンの話によれば、彼とサナは街で一緒に買い物をしていたそうだ。


 その日は異国のサーカスがやって来るという噂が流れて、普段とは比べ物にならないほどの人が集まっていた。


 広場の噴水の前でサナは忘れ物に気づき、すぐに戻って来るから噴水の前で待っていてほしいと告げる。



 だが、いくら待ってもサナが戻ってくることはなかった。この現場はサーカスを見に来て、サーカスに特別な招待状をもらい噴水の前にいたサナの友人も見ていたから嘘ではない。……招待状の内容は嘘だったようだが。



 ジェイソンはその後、サナが家に帰っていると思いこの家に帰ってみたが、サナはいなかった。そのままサナからの連絡を家で待っていたら身代金を要求した手紙が来たのだった。




 ……一見何もおかしいことはないように見えるが、ジョウは何か引っかかっていた。


 それをジェイソンの話を聞けば分かると思い、ジェイソンのもとを訪れたのだが、本人は何も分からないようだ。



 いや、何も分からないというより……。どうでもいいという感じにも見て取れた。





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