short novel

Orion




「もうそろそろ、オリオン座が見える季節も終わるな」


 笑い終わったかと思ったら、急に何か深い意味をこめて学は言った。それは早足で歩いていたのに、気になってゆっくり歩いてしまうほどだった。



「……何かあった?」


 らしくもなくしんみりしている学に向かって私は聞いた。



「別に。……陽子がオリオン座を見つけられない話がまたしばらくできないと思うと寂しくてさ」



 ……何か悩んでいるのかと思って心配した私が間違いだったのだろうか……?


 学は何事もなかったかのようにまたお腹を抱えてゲラゲラ笑っている。



「もう、知らない!」


 私がまた早足に戻すと、全く同じタイミングで学も早足に変わった。


「だってさ……」


 また中途半端に器用な言い訳を言いながら、学はまだ笑っていた。



 ……これじゃ私が、学とこんな会話をしながら歩いた冬が過ぎてしまうのが寂しいなんてとてもじゃないけれど言えない。



 代わりに私は、オリオン座を見上げて私は早足のスピードを変えずに願った。





 ――また来年も、学とこんな冬を過ごせますように。



 そしたらあなたがどんなに寒い日でも空で輝き続けられるように、私たちもどんな悲しい日でも笑っていられるから。




Orion
強いからさらにまぶしい



fin.

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