short novel

猫と昼下がり




「私に話しかけたんじゃないの?」


 私はとりあえず座り直して聞いた。


『ふむ、縁なのかもしれぬな』


 答えみたいな答えになっていないことを私に言った。……口は動いてないから言ったとはまた違うんだろうけれど。


『では人間よ。縁ついでに昔から伝わる猫のことわざを一つ教えてやろう』


 その猫は猫のくせに、偉そうにそんなことを……。言ったとは違うけれど、言ったってことにしておこう!


『足があれば雀は取れる』

「……は?」


 よく分からないことを、その猫は言った。


『足があれば雀は取れる。雀はそこにいるのだから、取ろうと思えば取れるのだよ』

「猫のたとえでも分からないんだけれど」


 私は何だかよく分からないけれど図星を言われた気がして、皮肉っぽく言った。


『猫でも人間でも同じだろう。君にも足があるじゃないか』



 私は何だかまだよく分からなかったままだったけれど、何だかそんなことはどうでもよくなったような気がして、何も聞かなかった。




 猫もそれ以上何にも言わずに、あくびをして目を眠そうに細めた。



 それを見ていたら、部屋の温度が少し上がったような気がした。





 いつの間にか私は眠っていたみたいで、起きるとそこには何もいなかった。




猫と昼下がり
少し不思議な昼下がり



fin.

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