不思議の国のありさ

もしもチェシュがありさに恋をしたら 2




 最近、自分のことがよく分からない。何だか動きの鈍いロボットを操縦してるみたいだ。


 しかも最近、体が熱い。これは風邪をひいたかもしれない。


「チェシュまた来てるの? 珍しい!」


 ずっと聞きたかったその声に、本人の意志に望まず俺の耳はピクピクする。


 彼女はアリサ。最近やって来たよそ者だが、とても真っ直ぐで見ていると吸い込まれそうな真っ黒な目をしている。


「…別にお前に会いたかったから来たわけじゃねぇーよ!!」


 こいつと会うと熱が上がるから会いたくないのに、こいつと会わないと胸がしめつけられて苦しくなる。


 風邪ではなさそうだけれど、一体これは何の病気なんだろうか。気がすすまないけれど、とっても気になるから今度ハットに会って聞いてみるか。


「そんなの知ってる。またいじわるしに来たんでしょ」


 少し剥れたような顔をしていたが、これがまた思わずかまいたくなるくらいかわいい。


 …って、あれ?俺、どうしたんだ?まさかこいつに振り回されてる?そんなわけない。俺はいつだって自由のはずだ。


「…そうだ」


 悔しいのでそう言い返すと、アリサは心配そうに俺を見た。その視線に耐えられなくなって、俺の口からは勝手に言葉が出ていた。


「何だよ!!」

「最近チェシュ、何だかおかしいなと思って。顔も赤いし、熱でもあるの?」

「うるせぇ!!熱なんてねぇーよ!!」


 そっと額に手をのばしてきたアリサの手をよけて、俺は叫んだ。アリサはさらに心配そうな目をして言った。


「やっぱり何だかおかしいよ! ロイドに見てもらおう。呼んでくるからちょっと待ってて」


 アリサはそう言うと、階段を駆け上がって行ってしまった。


 うぅー!! 俺なんかを心配してくれるとは、なんていい奴なんだ!!


 それよりもここから早く出よう。何だかアリサにはこの気持ちを知られたくない感じがする。


 それでもこの気持ちが何だか気になるから、このままハットのところへ行こう。


 俺はそう思って、窓を開けて外へ身を投げ出した。




 俺がその信じたくもない病気の名前を信じられるようになるのは、当分先のこと……だと思う。







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