不思議の国のありさ

チェシュとハットの日常 4





 ……そしてお茶を飲んだ瞬間に吹き出した。



「何だよ、これ!! ニガニガ草の味がするぞ!!」

「当たり前だ。それはまだ試作品だからな」


 ハットは何でもなさそうに笑った。俺はこの時ほどハットを憎んだことはなかっただろう。


「何で俺にこんなものをのませるんだよ!!」


 ニガニガ草というのは、日陰よりもどんよりと暗いところにしか生えない薬草だ。


 名前の通りとてつもなく苦いのだが、万病に効くと言われている。


「ニガニガ草は夏バテに効くらしいから、お茶を作ってみたんだ」

「何だよ、ナツバテって」


 オレは聞いたこともない単語に首をひねった。


 そもそもナツというのは何だろう。ナッツの種類だろうか。


「私のお茶を誉めてくれた方の住んでいるところは、とても暑くなってその暑さのせいで病気になる人が多いらしい。」


 おそらくその病気が、ナツバテというものだろう。


 オレは何か引っ掛かった気がしたが、面倒くさくなりそうなので、何も言わなかった。



「そこで、万病に効くと言われているこのニガニガ草でお茶を作れば、夏バテを解消できるかもしれないと思ったのだ!だがこのニガニガ草は、君も知っている通り苦いのはもちろん、匂いもきつくてとても飲む気にはなれない」

「…‥そうだな」


 抜け目のないハットのことだから、何かいいことを言うに違いないと俺は思ったが、俺は何か期待しているのを表情に出さないように、うなづいた。


「さっきのお茶は匂いを消すことは成功したのだが、味を消すことはできなっかった。そこで私は研究を重ね、ついにニガニガ草の味を消すことに成功したのだ」


 俺は最初からそれを飲ませろとか何とか文句を言いたいのをこらえて、ハットが取り出したお茶を見つめた。





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