不思議の国のありさ

プロローグ



「本当に?どうやったら、その時計は直るの?」


 私が聞いたのは、私の予想以上に弱々しい自分の声だった。ロイドは私の気持ちを察してくれて、頭をまた優しくなでてくれた。


「それは簡単だよ。君がこれから、今不思議の国で起こっている全ての問題を解決することだけだ」

「問題を全て解決する……? それって、かなり難しいんじゃないの?」



 ロイドは優しいながらも、その中に有無をいわせないような強さを秘めた声で言った。



「君は覚えてないだろうけれど、君が小さいころ、ここに来て運命を変えたことがある。覚えてなくてもいいんだよ。ただ、自分を信じることができなけば、この時計を直すことは不可能だ」


 そんな声でそんなことを言われると、私が言えることはたった1つになる。


「……分かった。やるわ。」



 その時、私がそう言うのを待っていたかのように電車が減速した。



 もしかしたら、この世界は私の心に影響されるのかもしれない。窓の外を見てみると、なんとなく空の色や木の感じが明るくなった気がする。


「じゃあ行こうか、アリサ」


 電車が完全に止まる前に、ロイドが私に向かって手を差し出して言った。


 ……まぶしくて、見てられないくらいの笑顔とともに。笑顔っていうのは、かっこいい人がすると、破壊力絶大だ。何よりもその歯の白いこと白いこと白いこと……。



 私はそのせいじゃないけれど、ロイドの手に自分の手を伸ばしてを握った。



 今度は少しもためらいもせずに。その時何だか分からないけど、暖かくて懐かしい感じがしたのは気のせいじゃなかった。





 こうして、私の未来の時計を直すための不思議の国の冒険ははじまった。


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