フタゴ編 その日の夜、私はある人物に会いたかったので、夜遅くまで起きていた。本当は双子と話しすぎて疲れていたが、どうしても会いたかった。 双子の問題を解決したことを報告するのはもちろんのこと、この先のこととかを聞きたかった。 ロイドを信用してないわけではないが、その人なら一番たくさんのことを教えてくれそうな気がしたから。 ……もっとも、気まぐれたがら会えるかは分からないけど。 それでも今なら会えるような気がしていた。 双子の問題は、私が名前をつけたことで、もう完全に解決したようだった。 双子はそれぞれ、自分の名前をとても気に入ってくれた。 短くて呼びやすいだの、太陽を名前の由来にしたからかっこいいだのしきりに言っていた。 ネーミングセンスがない私は、双子が二人とも名前を気に入ってくれてとても嬉しかった。 もう名前があるから、二人はお互い全く同じでいようとはしないだろう。 そして、それだから彼らも自分はたった一人しかいないこと、自分以外には誰もいないことを忘れないでいられる。 そう考えると、私の胸の中は言葉にならないあたたかさで一杯になった。 「……チェシュ」 私はそっと、待っている人の名前を呼んでみた。 「今日はずいぶんと、からかいがいのない顔をしているな」 私が呼んだ声は夜風に消えてしまいそうだったが、きちんと名前の主に届いていた。 「……つまり私が困ってないから、つまらなく見えるってことでしょ?」 「その通り」 チェシュはムッとしたように言った。今日は珍しく眠そうじゃない。 prev/next |