囚われの姫編 「じゃあ、僕はこれで。アリサに会いたがってる人いるみたいだし」 「私に? さっきたくさん会ってきたけれど」 「さっき会っていない人とか、さっき言いたかったことを言えなかった人じゃないかな」 「えっ、もしかして1人じゃない?」 「さあね」 もういつも通り余裕のあるロイドに戻っていたので、私は来客を待つ。最初に来たのは、さっき客室で会った人だった。 「個人的には話をしていなかったと思ってな。改めて礼を言おう」 「もうたくさん言ってもらったし、この国を元通りにするのは私の使命みたいなものですから」 「私はハートの国の姫だというのに、全く何もできなかった」 「国民のことを考えればしかたがないと思います。私はその心を利用したハートの女王が悪いと思います」 「それはそうだが……」 「大丈夫です。必ず私がなんとかします。私はアリサですから」 「そうか。しかし、来たときと比べて堂々としておるな。頼もしいぞ」 姫はそう言って、廊下の暗がりに消えた。嘘でもああ言うしかないと思っていったけれど、私の必死な様子でごまかせただろうか。 さて、来客はきっともう1人。 prev/next |