不思議の国のありさ

囚われの姫編





 夜になるとお茶会が落ち着くどころかそのまま飲み会になった。姫とナインさんは国民や衛兵のところをまわっている。私がいろんなところへひぱられそうになったところをやんわりと追い払ってくれた。私達は客室に戻ってきて、双子はさっき客室で寝たばかり。


 ロイドと人気のない廊下に来ていた。月明かりが薄暗く白い柱を照らしている。

「私、思い出したことがあるの」


 ロイドは静かに私の言葉を待ってくれていた。もしかしたら、ロイドの記憶も少し戻るかもしれないと思って私は次の言葉を口にする。


「私は不思議の国に来たことがある。小さい頃。詳しくは覚えてないんだけれど。……でも、不思議の国に来たとき、私がこの国を創ったの」


 しばらく沈黙が続いた後、ロイドが口を開いた。しかし表情は暗いままだ。


「……実は、そうじゃないかと思ってたよ」


 それ以上何も聞かないでくれるのがありがたい。どうやってとかなぜとか私は覚えていないし、理由もないのかもしれない。

 沈黙が続くから私は聞いてみた。


「ロイドも何か思い出した?」

「いや、何も。でもアリサが思い出してくれてよかった。これできっと僕の記憶を取り戻すことができるよ」

「そうだといいけれど」


 それ以上何か言うのは、何を言っても違う気がした。




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