囚われの姫編 大きな音がして、石碑はばらばらになった。途端に湧き上がる歓声。大広間の扉は開いていて、たくさんの人が喜んでいた。 それを見て私はほっとしたと同時に床に座りこんだ。駆け寄って心配してくれるロイドとサンとヨウ。周りを見てみれば、少しずつ大広間は赤から色を変えている。 「そろそろ朝のお茶の時間かな」 歓声の隙間からハットがティーセットをもって現れた。本当にこの人混みをどうやって突破してきたんだろう。ハットだからという理由で片づけられてしまいそうな気もする。 「そろそろ必要だと思って持ってきたのだが、いらなかったようだな。そうそう、そこの者たち。庭に大量の例の紅茶をいれてきたから、皆さんにわけてくれ」 「行け。みなに振る舞うのだ。今日は宴だ。もちろんお茶でな」 「そうそう、お茶菓子もあるから猫耳の少年からもらってくれ」 ハットの言葉にぽかんとしていた衛兵は、女王の言葉を聞いて慌てて動き出す。お菓子をもったチェシュの文句がかすかに聞こえる。『お菓子たくさんくれるって言ったじゃないか』かな。さすがはハットだ。 prev/next |