不思議の国のありさ

囚われの姫編




 やれるかどうかはわからない。でもやってみたい。私がこの国で何もできないと思いたくない。

 大きく何回か深呼吸してハンマーを手に取る。ロイドと双子の顔が見えて、私はこわばった表情だったろうけれど頷いて見せた。

 ハンマーは赤く染まっていたけれど、私がにぎると持手は木の色に戻っていく。それを見ながら、私は自分で信じられなくても、この国では特別な存在なのだと感じた。

 大きく振りかぶる。脳裏に女の人の声が響く。


『お前の大切なものはもらった。時間が経てば経つほど不安になるだろう。私はいつでもお前を後ろから見ているよ』


 確かに、大人に近づけば近づくほど私は不安定になった。でも、怯えてるだけなのはもう終わりだ。



 石碑へ歩を進めれば、女の人の声が大きくなる。記憶にはないけれど断言できる。ハートの女王だ。何かを言ってるけれど私にはその内容に興味はない。


 石碑に向かってハンマーをふりあげた。





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