不思議の国のありさ

囚われの姫編





 目の前には、意地の悪そうないかにも「悪人です」っていう顔つきのおじさんがいた。

 顔つきだけだったら私の思い込みですむけれど、髪は真っ赤。目も真っ赤。それで服も真っ赤。


 ちょっと理解するまで時間はかかった。だっていくら不思議の国とはいえ、あんまり縁のあることじゃなかったし。


「……どちら様ですか?」



 私は恐怖に震えたいのをこらえて、相手を怒らせないように努めて穏やかに聞いた。



「ここに『アリサ』がいるはずだ。お前か?」


 おじさんは頭が割れるんじゃないかって大声で怒鳴った。




 また、『アリサ』か。



 この時ほど、チェシュにバカにされてもいいから、似合わないのは承知で猫耳でもなんでもつけておこうと思った時はない。



 私が『アリサ』でないと思わせることができるなら、そのくらいするべきだった。



「誰?その『アリサ』って。何でその人を探しているの?」



 私はなるべく何でもないように聞いた。


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