仕立て屋編 「君は、ネネの問題は何だったと思うんだい?」 はっきりと言葉にはできないけれど、今では分かったような気がする。 何でネネちゃんがあんなに全てのことを悪く言ってしまうのか、何で私の言うことを全て悪くとってしまうのか……。 そして、なぜロイドが私にあんなに怒ったのか。 「自分に自信がないことなんだったんだね」 「いやそれでは甘い。彼女は自信がないんじゃなくて自信が持てないことだ。もっとはっきり言えば、自信を持つことを恐れている」 何だか他人のことのようには思えなくて……。 私はハットから目をそらして、夕暮れがはじまろうとしている空を見た。 「全てのことが上手くいくことなんてない。失敗や後悔を抱えているだろう。だけれど、それを越えなければ本当の成功も成長もない。私が最も恐れているのはな、アリサ……」 ハットはそこで言葉を切った。私はいつの間にかハットと目を合わせていた。 「あきらめてしまうことなんだよ。自信を持つことは怖いことでもある。それよりはどうせう上手くいかないと思っていた方が楽だ」 そうだね、だけれど……。 私は心の中でつぶや言ったことをハットより先に言いたくて口を開いた。 「だけれど、そんなの逃げているだけだわ。何の解決にもならない。いつまでも解決しない」 「だから私はネネが怖かったんだ」 ふと疑問に思ったことがあって、私は口を開いた。 「『怖かった』ってことは、今は怖くないの?」 「ネネは変わったよ。君が変えた。不可能だと私は思っていたけれど、どうやら、彼は違ったようだ」 ハットに誰だか言われなくても、私には『彼』が誰だか分かった。 prev/next |